港町に一人の男がふらりと現れたところから物語が始まる。その港町には廃船に孤りぼっちで暮らしている少女や、近くの倉庫街の一角に住みついているキングと呼ばれる浮浪者、その女、キングの配下、結婚詐欺師、ヤクザとその情婦、そして舎弟などがいた。男は少女の廃船で暮らすことになる。彼はこの港町に、若い頃放浪の果てに住んだことのあるブルックリンのことを想い出す。管理され、うわべだけは美しく整えられているが隣人と言葉を交わすことすらないような街とは違う、ほんとうの町・・・・。詐欺師に結婚を迫るOL、ヤクザの足を洗うようにすすめる屋台のおかみ、父親からの手紙だと偽って自分で自分に手紙を書き続ける廃船に住む少女、拾い集めたしおれた花を売る知恵遅れの少女など、そこには現実の街では生きることのできない哀しい人間たちの吹き溜まりのような所だったが、男には人間が住むほんものの町に思えたのだった。しかし、彼らはウォーターフロントの開発のために立ち退きを迫られていた。地上げをめぐって暗躍するキングやヤクザたちと、立ち退きに反対する住民たち・・・・。屋台のおかみや男に捨てられてばかりいるホステス、彼女と暮らしているおかまなどとの間で争いが続いていた。廃船で暮らす少女は男に恋して、それまで男の子のような格好や言葉使いだったのに、しだいに女の子らしくふるまうようになる。少女に愛を告白された男は、この港町を去ることを決心する。そして倉庫街の住人たちに、自分の住む町がいかに大切かを説き、もし町を失えば自分のように一生放浪して暮らすことになるのだと、立ち退きに反対するように説得する。怒ったヤクザは政宗にピストルを突きつける。そして・・・ |