母の危篤の知らせを受けた優作は、14年振りの帰郷で駅に降り立った。病院に母親を見舞った彼を待ち受けていたのは、父の死後再婚した母が産んだ、父が異なる妹だった。
母は癌で口もきけず、後何日生きられるかわからない状態であった。家に泊まるようにと懇願する妹に、明日また来ると言い残して病院を後にした優作は、迷った末に幼なじみの友人に電話して、小学校の桜の樹の下で会うことを約束する。桜吹雪の向こうから現れたのは、小学校の頃「櫻組」と名づけて一緒に遊んだ仲間達だった。様々な想い出が桜降る小学校の校庭に浮かび上がる――――――――。
散歩に出た優作は、木蓮の花香る坂道でかつての恋人だった人に再会する。彼を激しく襲う追憶の日々。目の前を走る想い出のパノラマ。優作は過去から逃げていた自分に気がつき、想い出を冒険しようと心に決め、皆で海へ行くことを計画する。春の海辺に、彼ら全ての人が忘れていた「人生の時」が波打つのだった。
そして、母の死。その夜優作は、母に抱かれて空に舞上がる幻想をみる―――――。 |